「僕の心」





僕の心は閉じていた

僕の心は暗闇の中にあった

僕の心は寂しくいつも泣いていた




いつしか僕は自分を守るために

人間としての感情を捨てた

僕の心は冷たく、機械のように冷めていった






感情は麻痺し、傷つかなくなる代わりに、温もりを失っていた

心は冷たく閉ざされ、無機質なシステムに変わっていた

僕は人間としての心を捨て、ロボットになることで自分を守らざるを得なかった





人と話すことが怖かった

ロボットであることがバレるのが怖かった

ロボットである僕は嫌われるのが怖かった




いつもいつも人をさけ、自分の殻に閉じこもり、感情を殺していた

僕の顔からは完全に表情が消えていた

僕の顔はいつも寡黙で、いつも考え事をしているようだった

心から笑ったことなんてなかった

笑っている人が疎ましかった

ロボットは笑うことができない

感情を持つことができない

僕は人間としてはもう終わっていた







僕はしばらく休むことにした

自分に鞭をうち、がんばってきたことを認め、しばらく休むことにした

おいしいものをたくさん食べた

色々な場所に出かけた







相変わらず僕の心は冷たかったけれど

ふとした瞬間に人に戻っているような気がした

でも僕の心はもう傷つくのが嫌で、すぐに閉じてしまう

そんな日々が続いた







しばらくして僕は働きに出ることにした

僕はロボットだから仕事ははかどった

あたりまえだが機械は機械的な仕事に強い

僕は仕事の中で周りから認められていった





僕は自分の中で「嬉しい」と言う感情が芽生えていることに気がついた

必要としてくれる人がいることに気がつき、嬉しくてしょうがなかった

そしてもっともっと自分を見てもらおうとがんばった






僕の居場所、僕の存在がそこにあった







僕の心は次第にロボットでいる時間が少なくなってきていた

感情を持ち、表情を作れるようになって行った

僕は人間が好きになることができた

人と話すことが怖かったあの時、
その時を振り返る余裕を持てるようになっていった








僕は人間に戻りきれたとは言えないけれど
ほとんど人間に近い存在になった







僕は以前のロボットだった頃の自分をいつも慰めている

なりたくも無いロボットにならざるを得なかったあの時間を慰めている

僕はもし他にそう言った思いを持っている人がいたら、
手助けをしたいと思うようになった

人と関わる事が嫌になっている人の光になりたいと思うようになった






そしていつしか残りの人生を費やす価値があると思うようになった


僕は生涯をかけて成す仕事にめぐり会えた




僕の心はついに人間に戻ることができた




人間に戻った僕は
生涯を人間のかかわりの為に生きようと
堅く誓った











平成18年3月15日

川島達史

















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