「自転車泥棒と善たるワラジ」

「自転車泥棒と善たるワラジ」

　先週の水曜日、ある事件に遭遇しました。
その日は深夜の1時ごろでした。やっとのことで仕事が一段落し、
映画でも見ようとレンタルショップに自転車で行った時のことです。
　ショップでは何を鑑賞しようかと迷ってしまうものですが、
まあ迷ってもせいぜい30分ぐらいだろうと思い、
いつもの癖で鍵を掛けないでお店に入って行ってしまいました。

　甘い考えは見事に裏切られました。
ついに自転車を盗まれてしまったのです。
我が目を疑うとはこのことです。
たかだか30分の間に自転車を盗まれるとは・・・
立ちすくむ私を、周りの暗闇が
あざ笑っているかのようでした。　

　今年に入って2件目の盗難被害です。
冬には頂いた講座代金が入った鞄を誰かに取られてしまいました。
日本人のモラルはどうなってしまったのかと
なんだか悲しくなります。

　しかし、しかしです。木曜日に信じられない事件がありました。
その日はいつものようにスタバで原稿を書いていました。
私は夏場はかなりラフな格好をしています。
100均のワラジ、Tシャツにジーパンと言う全く異性を引き付けない
風貌で黙々と作業していました。

　数時間原稿を書き、そろそろ疲れたなあと感じ、
私はトイレに行こうとしました。その時です！
私の愛用の100均のワラジがブチっと音を立てました。
親指と一指し指の間にある紐とワラジをつなげている
部分が取れてしまったのです。
「さすが100均！！」と1人で突っ込んでいたのは良いのですが、
さて困りました。

　しかし困ったところでどうにもなるものではありません。
私は仕方なく、片足は裸足でそそくさとトイレに行きました。
生理現象には勝てませんから。
　スタバはお洒落な方がたくさんいらっしゃいます。
裸足とワラジファッションは未だ日本には浸透していない
スタイルです。私はそんな前衛的なファッションを
初めてスタバで導入した人間となったわけです。

　さてさて、トイレから戻り、ワラジを再び買いに行くか、
原稿を仕上げるか迷ったものの、とりあえず
面倒臭いことは後回しにして、原稿を仕上げることに
しました。

　そして、しばし、原稿書きに没頭し、
完全に仕上げるまで頑張りました。
その時間1時間程度でしょうか。
「ああ！やっと終わったー、じゃあワラジでも買いに
行くかー」と思い、片付けを始めたそのときです。

　私の足元になにやら見慣れない
ビニール袋が！明らかに私が来る前には無かった
ビニール袋です。
「？？？」
と言う気分で中を見ると、

信じられないことに100均のワラジが入っていたのです。

「信じられん！」
と思いましたが、何度確認しても
100均のワラジなのです。

　スタバから100均まで往復10分はかかります。
お店で吟味している時間等考えると
おそらくその方は私の為に20分ぐらい使って
ワラジを買ってきてくれたに
違いありません。それも身銭を切って！

　なんと心の優しい方なのでしょう。
もし女性だったなら、私の邪な心が炸裂し、
きっと口説いていたに違いありません。
日本人もまだまだ捨てたものじゃないなあと
感じました。
　

　水曜日に疑いの念で満たされていた心は、
ついぞ木曜日に綺麗に洗い流されたのです。
皆さん、日本人はまだまだ綺麗な心を持っている
ようですよ！！私も困っていた方がいたら恩返しの
つもりで尽くします！　

　そしてワラジを買ってきてくれた
身も心も美しい貴女（妄想）！
私にご一報をっ・・・

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