「未知との遭遇と公的自己意識の目覚め 3」



未知との遭遇と公的自己意識の目覚め 3」




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 待ち合わせが終わると、男の子集団と、女の子集団は
団子状態になりボーリング場へ向かって行った。決して
2つの集団が交わることは無い。女の子集団はただただ
男の子集団についてくるだけだった。




 10分ほど歩くと,パークレーンと言うボーリング場についた。
シューズと玉を選ぶと、ある問題が生じた。同じレーンでは
最大4人(?)程度が定員であったため、2チームに分かれる
必要があったのである。
 男の子チーム、女の子チームが別々でボーリングに
興じたのではさすがに何のために集まったのか解らない。




 この状況を打破すべく、女の子に対する免疫を持つヨシハラが
女の子集団に歩み寄った。ヨシハラは男組みの中で唯一姉と妹が
いたのだ。




「女の子と男の子2人づつ、
 4人チームを2つ創ろう」



 さすがヨシハラである。さらっと言いのけた。
男子校の中ではとりたてて目立つ存在ではなかったヨシハラが
尊敬の念を集めた瞬間であった。


 

 しかし、私はこの時、嫌な予感がした。
男子が2人と2人に分かれると言うことは、男1人1人の負担が
増えるのではないか?
 4人と言う集団であれば、「集団」と言う迷彩に隠れ、
目立つことは無い。しかし、2人という人数は過酷である。



 集団によりリスクを分散させる動物として羊がいる。
もしこの羊が群れからはぐれ、たったの2匹になったら
どんなにか心細いか。哀れな14歳の男子の状況をお察し
いただきたいところである。




 しかし運命は容赦ない。おそらく不細工であろう私は、
2人の女の子と同じチームになった。私は女の子の顔を見ることが
できなかった。緊張と恥かしさで顔は真っ赤になっていた。
私は自分の顔の赤さを激しく自覚した。


 


 私は赤い自分の顔をなんとか隠したかった。
(落ち着け落ち着け、赤くなるんじゃない。
 赤くなるんじゃない。落ち着くんだ!!)
しかし無常にもそれはそう思えば思うほど逆効果であった。




 私の顔はますます赤くなり、ついには
赤色を通り越し、青色になりつつあった。
私は自分の顔色が恥かしくてしょうがなかった。
私は自分の顔色を隠すため、ずっとレーンの端にある
ピンに目を向けていた。




 しかし、私の番は容赦なくやってくる。
私は苦笑いを浮かべながらボールを取りに行く。
そのときである。私の隣にいた女の子とふいに目が合ってしまった。
女の子は私を見て、クスっと笑った。





 私は女の子が自分の顔の赤さを笑ったのだと確信した。
今思えば彼女がなぜ笑ったのかは定かではない。
それはもしかしたら私に向けられた軽い好意の証だったのかも
しれない。




 しかし当時の私には赤い顔を笑われたのだと
確信せざるを得なかった。私は青二才だった。
ただただ恥かしいの一点であった。



 
 私は女の子に見られることが怖くなっていた。
私はダボダボのダサい洋服を着ていたし、
野球部あがりで髪型もダサかった。おまけに赤ら顔である。
話も全くできないし、もてるわけが無い。私はもはや
トキメキをもって女の子との会話に望むことなど
できなくなっていた。
 今振り返れば可愛い限りの出来事ではあるが、
当時の挫折感たるや散々なものだった。



 ボーリング大会の勝利者はヨシハラと
タネヤンだった。彼らは後日女の子との2人きりの
デートに成功したのである。




 私は女の子からアプローチをされず、
また自分からもアプローチはできなかった。
私は同じ男としての戦に破れたのである。
異性間における大きな挫折をこの時期初めて
味わったのである。







(続く)








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