「僕は自分が嫌いだった」


「僕は自分が嫌いだった」




 私は大学を卒業したとき、無職になっていました。
この状態はニートとも言いますし、引きこもりとも言いますし、
視線恐怖とも、表情恐怖とも、対人恐怖とも、社会不安障害とも、
鬱病とも、とにかく悪い言葉でいくらでも形容できるような状態でした。




 この頃は一言で、自分の事が大嫌いでした。
頭が悪く、容姿も優れず、会話がまともに出来ない。
声がまともに出ない。目を見て話せない。
心はズタズタでした。




 私の部屋は3階にあります。そして、両親は共働きです。
午前8時になると両親は働きに出ます。
顔をあわせたくないので、両親が働きに出た後に、
1階へ下りて、食料をとり、また上に戻って
親と顔をあわせないようにしていました。
 運動もしないので、過食を繰り返し、
今よりも18キロ位体重が増えていました。




 町にもほとんど出れないので当たり前ですが、
美容院など行けるわけがありません。
そもそも美容師さんに話しかけられることほど
怖いものはありません。私は自分の髪をスキバサミで
バサバサと切っていました。身も心も無残でした。




 いい年をした働き盛りの男が、
なんでこんな情けない日常を送らなければならないのか。
親の稼ぎで口に糊をしている。コソコソと隠れながら。
情けない。情けない。情けない。
鏡を見たくない。人と会いたくない。




 最も恐れていたのは父親と顔を会わせることでした。
父親は会社員としては成功した人です。
厳格で、曲がったことが大嫌いな性格。
そんな厳格な父からすれば、私が全くの期待はずれで
あることは明白でした(今ではお互い認め合って、仲がいいですが)。


 

 自分にとって重要な人から前向きな言葉を
もらえないことほどつらいことはありません。
孤独は乗数倍で増大し、不安に心が覆われていました。
そして実際壊れていました。



 しかし、


「コミュニケーション能力をつけたい。」
「まともに人と話ができるようになりたい」




 と言う思いだけはありました。私はひたすら様々な
心理療法を続けました。カウンセリングに行く
お金がなかったので、自分自身で色々な療法を試しました。
森田療法認知行動療法問題解決療法、自己カウンセリング・・・




 どもりを直すために滑舌の練習を1日5時間もしたことがあります。
会話の組み立てや、質問の仕方を研究し、練習を繰り返しました。
目を見て話すことが出来なかったので、
まずは写真からなれるようにしました。



 心理療法を繰り返し、写真に慣れると、
少しだけ家を出ようと言う気持ちが芽生えてきました。
本格的に家から出なくなってから半年以上経っていました。



 家からなんとか出られるようになると、
まずはコンビニで20円のお菓子を買って、
袋をもらうときに笑顔で目を見る練習をしていました。
1つのコンビニで練習すると、別のコンビニに行って
同じ事を繰り返しました。これなら200円で10回
人の目を見る練習ができます。




 最初は相手を目を合わせると、
針で刺されるような痛みを感じていましたが、
何度も見ているとだんだんと慣れてきました。



 ちょっとした告白になりますが、
お金をかけないで練習するために、
携帯電話のショップに行って、
練習をしていたこともあります。




 22歳の無職の男は、暗い顔をして、
ボサボサの髪の毛と小汚い格好で、
一生懸命町を周り会話の機会を
得ようと必死になっていました。


 
 
 そう言った努力を積み重ね、徐々に自分を受け入れ、
人と話す練習を重ねると私は社会へ復帰することができました。
コミュニケーション能力は「自分を変えよう」と本気で覚悟し、
毎日努力すれば随分回復するのだと身にしみて感じました。




 努力し続けることは結構大変です。コミュニケーション能力は
蓄積型の能力ですので、短期間ではそこそこの向上しか望めません。
しっかりと努力して、かつ長期間続ける気力が必要です。
少なくとも1年。毎日1年続ければ、相当人は変わります。





 その後、私は会社員を2年続け脱サラし、
この苦しんだ部屋でダイレクトコミュニケーションと言う
会社を創りました。コミュニケーション系の会社はたくさん
あると思いますが、元々引きこもりだった人間が
苦しんでいた部屋から始まった会社は世界広しと言えど、
ダイコミュぐらいでしょう。





 今では事務所を移転したので場所は変わってしまいましたが、 
原点は変わりません。 今でも実家に帰ったとき、
3階に上ると、色々な思い出が詰まった部屋で
しんみりします。今ではたくさんの生徒さんに
支えられて、会社は運営されています。





 あの時の経験がなければ今の自分はなかった。
あの時の経験から僕はチャンスをもらった。
僕は生かされている。生きて、恩返しをしようと思っています。




 





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