蚊と恐怖心

 
 お風呂に入ろうとした時、
蚊が背中にいることに気が付き
バシっと背中を叩いたのですが、ヒラリとかわされてしまいました。
蚊はその後少し空中を漂い、今度は背中目掛けて
再び飛来してきました。


 普段なら「しめしめ」と思い一思いに殺してしまうところですが
ここで、あることに気が付きました。


 普通に考えれば一度攻撃されたことが解れば
その対象からより遠くへ退避することを考えるはずです。
この蚊の例で言えば一度攻撃されたのだから
もっと遠くへ逃げるべきです。


 確かにこの蚊は第一次の攻撃をかわしたので、DNA上
「逃げる」と言うプログラムはインプットされているようです。
しかし、ものの5秒で再び同じ対象に向かって血を吸いに来てしまう。


 おそらくこの蚊には脳味噌の容量の関係で、
恐怖心と言うものが皆無なのだと思います。
恐怖心が無いために、非常に危険な対象に向かって
二次攻撃を仕掛けてしまう。


 心理学では人間の最も原始的な感情は不安や恐怖心であると
言われています。生まれた赤ん坊がすぐに泣くことから
解るようにそれらは人間の根本的な感情なのです。


 不安や恐怖心を持つことは決して楽では無いです。
しかし色々な面で自分を助けてくれます。
生を受けて始めて抱く感情が不安や恐怖心であることは
その感情が人間にとって一番大事であることを端的に表しています。


 大人になると不安や恐怖心を持つことをなるべく避け、
もっと言えばそう言った感情を押し殺してしまいがちです。
不安や恐怖心を持つ自分の心を未熟な精神と捉え
そしてその心を打ち消そうと躍起になります。


 しかし根本的な感情を消そうと思ったって、
人間の芯の部分の感情なんだから消えるわけがありません。
そして消す必要も無いのです。
自分を守ってくれる大事な感情なのだから。
(過度の不安や恐怖心を持つことが良いと言うわけではありませんが)


 今日は「勇気ある蚊」から
その重要性を教わりました。


 先生には丁重に私のおいしい血を
謙譲いたしました。


 痒いです。