「コミュニケーションスキル」


「コミュニケーションスキル」





1.コミュニケーションの2分野



 コミュニケーションに関する分野はとても広い。
「コミュニケーション」をざっくりと2つに分けると
対人コミュニケーションとメールや電話など、
それ以外のコミュニケーションに分けられる。
 ダイコミュは対人コミュニケーションを専門とする
会社であるから、着目すべきは前者である。



2.言語、非言語、スキル


 さて対人コミュニケーションをざっくりと分けると
言葉を使った「対人言語コミュニケーション」と
表情や声と言った「対人非言語コミュニケーション」
に分けることができる。

  

 さらにこれらの「使い方」は心理学的に「スキル」と表現される。
「スキル」とは練習によって獲得されるものである。
例えば私たちが日本語を使って話すのは「スキル」である。
これは小さな頃から練習して獲得されているからだ。
その意味で私たちは生きていくために
「対人言語コミュニケーションスキル」と
「対人非言語コミュニケーションスキル」の獲得が必要となる。



3.環境、気質、スキル


 さて、コミュニケーションはこのように分けられるが、
その上位に絶えずあるのが「環境」であるコミュニケーションスキルは
「環境に即したもの」でなければならない。
寡黙であることが最善のコミュニケーションスキルであることもあれば、
積極的に議論することが最善のコミュニケーションスキルであることもある。
コミュニケーションスキルは環境に対して従属的な位置づけにある。



 個人レベルで考えると、コミュニケーションスキルに大きな
影響を及ぼすのが気質である。気質とは遺伝的にある程度
決められている性格である。コミュニケーションスキルは絶えず
気質の影響を受ける。気質は変化しにくいから、環境との相性が
非常に重要になってくる。例えばおとなしく、やさしい気質の人が
格闘家になるのは難しいだろう。もしかしたら医療系や教職の
方が適しているかもしれない。



 気質と環境は本筋として合致していることが望まれる。
その上で、経験によって変化が可能な「スキル獲得」を目指すことになる。
イメージとしては、私たちの身長や骨格は大きく変わらない。
これが気質である。しかし、筋肉や体重は変えることができる。
これがスキルである。私たちはそれぞれの体格にあったスポーツを選択し、
その選択されたスポーツにおいてそれぞれの体を作り上げていく。
そんなイメージである。そもそも身長や骨格の面で合わないスポーツを
選択してしまっては才能を充分に活かせない。




 
4.心はどこまで変わるのか?

 コミュニケーション講座は環境に適合できず悩む成人が参加する。
ここで問題となるのが人間がどこまで変われるのかと言う単純な問いである。
まずは心の面を考えてみる。先ほど示したように、気質に関しては人間はさほど変化しない。
自己啓発系のセミナーでは、密閉された空間に人間を閉じ込め、
過度に感情的にさせることで一時的な性格の改善を促すところもある。
これはパチンコのフィーバーと同じで一過性の快感しかもたらさない。
再びその快感を得ようと高額の講座代金がかかるなど中毒性があることに注意しなくてはならない。
気質の変化を狙ってもそれはほとんど徒労に終わる。



 ただ、心のあり方がまったく変化しないのかと言えばそうではない。
たしかに気質は変化しないが、先天的な要因に依存しない、
経験的な性格は訓練によって改善が可能である。
 心理学の世界は精々150年程度のまだ浅い分野であるが、
ある程度統計的に成果が上がってきているのが認知行動療法
来談者中心法である。しかし、これらの療法は一言でまどろっこしい。
成果を短期間で求めず、ゆっくりと時間を取る余裕が必要となる。
心が明日からすぐに快晴になるような療法は世界中探しても存在しないが、
成果はある程度得られつつある。これが現状である。





5.スキルはどこまで変わるのか?


 さて、これに対してコミュニケーションスキルはどこまで変化するのだろうか。
実はこれは心理学的にほとんど未開拓の分野と言って良い。
正確には、小学生、中学生に関しては変化があることが分かってきているが、
成人についてはほとんどまともな論文が存在しない。
研究領域が医療領域や教育領域に限定されているからである。



 医療領域においてはアスペルガー障害、自閉症学習障害など、
障害を持たれた方が一般社会で生活するためのスキルを獲得するために研究されてきた。
教育領域はについては、特別支援教室に対する教育と、
一般の健常児に対して、攻撃性やアサーティブな態度を身につけるための
教育の一環として行われた。教育現場では特に、「いじめ」問題への動機付けが大きい。



 
さて、取り残されたのが、一般成人向けのコミュニケーションスキルの教育である。
一般成人の多くが仕事上、恋愛、友人関係、家庭においてコミュニケーションで悩んでいる。
コミュニケーションスキルは対人不安や孤独感と正の相関があることが分かっているから
その必要性は、障害を持つ方や、小学生となんら変わらない。




 しかし、成人は子供と比較し、考え方やスキルが固定化している。
苦戦が予想される。ただ、成人向けのスキル研修が存在していないわけではない。
臨床領域や教育機関ができないことをこれを補ってきたのが一般の研修系の企業である。
これらの研修機関の多くはビジネスでの成功を目的とした研修である。
さて、その成果がどうなのだろうか。これは一言で言えば「効果がある気がする」だけである。




 効果についてはアンケートと言う手法を取り、これを対外的に示す企業が多い。
心理学的にきちんと立証するためには、薬の検査と同じく、
統計的な手法に則って行わなければならない。
しかしながら、現実的に、この検査が相当まどろっこしい。



 まず、実験参加者の問題である。実験には少なくとも
30人程度の参加者が必要となる。そして30人の参加者を3ヶ月間、
合計12回は質問に答えてもらう必要がある。これだけでも相当な予算が必要になる。
小学校では簡単にできることが成人となるととたんに難しくなる。



 また、検査手続きの煩雑さが挙げられる。効果分析については
他者評価と自己評価の2通りがあるが、その検査のやり方も相当綿密な段取りが必要となる。
さらにその検査したデータを分析するには高額なソフトと人件費がかかる。
 さらにはそもそも、効果を分析する心理学的な知識がほとんどの
企業に不足していると言う現状がある。





6.統計を始める

 ダイコミュはこの条件をなんとかクリアして
2009年からデータの蓄積を始めることができるようになった。
まだデータ数が少ないが、統計的に成人向けのスキルの獲得を分析する
会社としては日本ではじめてである。
 来年はそれぞれの講義において個人ごとにレーダーチャートを出したり、
教室ごとの効果分析をして、結果を報告したり、
アカウンタビリィティをしっかりと果たすことを目標とする。


 来年は広告への投資は控えめにして、
とにかく講義内容へ積極的に投資していく。
またダイコミュは変化する。





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