「こうあるべき」


「こうあるべき」





  私は20代の前半に完全に引きこもっていた時期があります。
引きこもって何をしているのかと言いますと、
苦しくてしょうがないので、この苦しみはどうすればなくなるのか
一日中考え事をしているのです。



 この時期から私は心理学や哲学の勉強を本格的に始めました。
この時期は所謂、コミュニケーションにおける「こうあるべき」
というものを徹底的に疑っていた時期でした。



 例えば私は昔、完全に笑顔を忘れた時期がありました。
あまりにもつらい時期だったので、その感情自体を感じなくなる
ようにすることで自分を守らざるをえなくなっていました。
すると様々なことに、感情を押さえるので、表情がほとんど無くなり、
泣くこともなければ、怒ることもなければ、笑うこともなくなっていました。
「つらい」気持ちはどこか心の底に押し込めて、無の状態で
いるようにしていました。




 無というのは、プラスでもなければマイナスでもないので
マイナスばかりの生活をしていた私にとっては
それは居心地がいいわけではないのですが、
マイナスよりはましな状況でもありました。
苦しくてしょうがない時期はそれでそうにか
脱出することができました。




 無表情になることを覚えてからは
少し町に出られるようになりました。
たまに雀荘に行ったり、コンビニぐらいだったら
いけるようになりました。




 しかし、人間と言うものは
どうも飽きてしまうと言いますか、無の状態が長く続くと、
もう少し楽しみたいと言う欲求も持ち始めます。
では私はもう少し楽しむにはどうすればいいのか?
無表情で考えていました。




 「コミュニケーション」ということを考えますと、
「笑顔であるべき」であることは確かに「そのほうがうまくいきそう」でした。
無表情ではなんだか相手の反応もよくありませんし、
自分自身も面白くありません。だから笑顔をもう少し増やした
ほうがいいのかとも考えました。




 しかし、でも本当にそうなのか?と考えると、
確実な証拠はありませんでした。
様々な書物を漁りましたが、それが本当にそうなのか?
明確な証拠はどこにもありませんでした。




 統計的には、笑顔の人の方が好かれるという、
証拠が上がっていることも確かです。
ですが、その逆で必ず「はずれち」があり、
笑顔でなくても好きになるひとはいるのです。




 「笑顔の方が好かれるよ」
という当たり前のような価値観は、
じゃあどこにその明確な証拠があるの?
と問いた瞬間、言語で完全にロジカルに証明された
証拠などなく、人間が多数決のように作り出した
ものであると気がついたのです。


 
 
 これは私にとって大きな発見でした。
世の中はあらゆる○○べきであふれています。
笑顔になるべき、勉強するべき、ご飯を食べるべき、
安定した会社にはいるべき、偏差値を上げるべき、大学を卒業すべき・・・



 
 ですが実はあらゆる○○べきは「真理」ではないのです。
物理的な法則と違い、価値観はどうあがいても、
絶対的な基準として立証することはできません。




 だから、私はこうあるべきと言うものに到達できていない
自分と言うものをすごく責めていたのですが、
でも、それは真理ではないのだから、もう少し自分を許してあげても
いいのではないかと考えるようになりました。
この辺は、ニーチェのおおいなる正午の概念、カントの無知の知
般若心経からヒントをもらっていました。




 なんだか「○○すべき」から開放された瞬間、
私は私を縛っていたコミュニケーションの様々な
制約から自由になった気がしました。
だからと言ってコミュニケーションの勉強を
やめるわけではないのですが、


「真実だからやらなきゃいけない」


と考えながらコミュニケーションの練習をしたり
勉強をするのと



「真実ではないがこれをやると楽しく生きられるかもね」



と考えながらするのでは、
楽しさが全然違うのです。




 
 私は生徒さんたちに、アイデンティティのワークで
最後は自分らしさを発見して、うまくいかないことも
受け入れて欲しいということを伝えていますが、
これは普通の認知行動療法とかではまず伝えないことです。
そもそも「コミュニケーション講座」でアイデンティティの話を
するなんて、日本でも私だけでしょう。聞いたことありません笑





 私は講座の中で「○○べき」と言うワークも確かに
お伝えしています。SSTなんて特にその特色が強いです。
ただ、私はたたき台として使って欲しいとも絶えず考えています。
 様々なワークを通して、コミュニケーションと言うものの構造を理解して、
自分の立ち居地を確認する。そうしてやっと自分のやり方がわかってくると思うのです。
何も無い状態では、自分自身を確立するのも結構難しいです。
またそれが満足いく確立になるとも思えません。




 だから極論してしまえば、
やりたくなければ、やらなくていい
という権利は絶えずあるのです。





 それをやることで、自分の人生が楽しくなりそうだったら
簡単ではないかもしれませんが
前向きに努力して自分のものにすればいいし、
俯瞰して自分にはあわなそうだったら
前向きに削ってもいいのです。
だからその辺は楽に構えていいと思います。









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